28.ランダムナイトメア

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「うん!四人共いい顔してるわね。初めての試験だけど、緊張せずにやればいいわ。努力と決意の分だけで結果は豊かに実るものよ、だから何も不安に思う事は無いからね。」 随分と親切で真摯な言葉を唱えられ、シオ達は一瞬呆気にとられる。監察員はその立場のせいもあってどうにも接しがたい距離感があった。また監察員も冷淡な印象があり、こうも親しげに励まされる経験自体そう無い事も大きかった。 フレンシェルの磨き上げられた、スマートなプロポーションの上に羽織られた監察員のコートが冷徹な観察者では無い、彼女のスタイルをより際正せるアクセサリーのようにすら感じさせる。 「あ、はい。どうも、ありがとうございます…。」 戸惑いながらも、ラウルがチームを代表して謝辞を述べた。 フレンシェルは相変わらず邪気の無い笑みを浮かべていたが、ふと何かを察して振り返った。 ワイルドキューブが身震いしたかと思うと、重い気流を吹き出す音を流しながら四つの扉が開いた。その奥からそれぞれ人影が現れる。 エリス達のチームだ。それぞれある程度消耗した痕跡を服や肌に現し、疲労の色を顔に映している。だがその顔つきに後ろ向きな陰は無く、充足した達成感が遺憾なく現れた、爽やかさばかりが光っている。 「あっ、シオ、リク、シェリル、ラウル!」 エリスが四人を見つけて、蝋色漆を持つ手を大きく振った。輝かしいばかりの、誇り高い笑みを振り撒く。
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