863人が本棚に入れています
本棚に追加
「索敵が利かない…。」
ラウルはウィル・オブ・ウィルを展開させ、プレートを分散して周囲の状況を察知しようと努めている。しかし、プレートから放射される魔力は何も感知しない。無機質な壁はその向こうを完全に遮蔽していた。
「何かしらのトラップがあると思ったけど何も無い…?」
ラウルは面食らった。用心を重ねて初っ端からウィル・オブ・ウィルを使って見せたがこれでは肩透かしだ。しかしそうも云ってられない。切り替えて、先に進まねば。
「…次の部屋に行こう。」
正面のドアを見つけて近寄ると、ドアは自然と案内するようにラウルを通した。
ユラリ
「っ!」
ラウルは振り返った。極々一瞬、微かに震えた気配を察知したからだ。
「…気のせい?」
警戒心を頑強に構築してラウルは先に進んだ。部屋に入ったと同時に警戒心の方向は別にシフトする。後方への配慮は知らず知らずの内に捨て置かれていた。
ドアが閉まると同時に、床から暗い波紋が浮かぶ。大理石調の床から起き上がって来た影法師はラウルの行方を認識した後、ゆっくりと前に進んだ。ドアの前に立つにはまだ距離がある状態でドアが開いた。しかしまだ距離がある状態だ、ドアは影法師を迎え入れる前にドアは閉じた。
影法師はそれでも進む。閉められたドアを素知らぬ顔で
すり抜けた。
最初のコメントを投稿しよう!