28.ランダムナイトメア

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「ライトニングヴェスパー!」 影法師が入った瞬間、目も眩む雷撃が迫った。回避する間も無く、影法師は雷撃に晒される。 激しく鳴り響く衝撃音をラウルは注意深く観察する。閃光で姿が隠れているが、追跡者は虚像に近しい体質を持っている。ドアをすり抜ける相手に雷撃が有効である保証は無い。 余念無くプレートを操作し、追撃を一手一手配置する。そしてライトニングヴェスパーを停止させた。 「よし、次は…」 カタストロフィカノン、と唱えようとした矢先、極太の波動が目の前を横切った。 「うわあっ!」 予期せぬ攻撃にラウルは身を縮めて退いた。配置していたプレートが波動の中で消滅していく。 「な、な…どうして…?」 波動は床に衝突して四散、青い残照を振りまきながら消え去った。ラウルは慌てて配列が乱れたプレートを回収するが、幾つかが青みを帯びており、崩れ始めていた。 「あの影が…?」 ハッとして前を向くと、ライトニングヴェスパーを諸共していない様子を見せる影法師が立っていた。 「効いていない…!」 影法師は文字通り影そのものだ。半透明の、鈍色の人型。沼地に水鳥が佇んでいるように、足元だけが液状化していて、その上に足が突き立てられている。 無論影である為表情は無い。暗がりを人型に切り取って立たせたかのように、ただ純然たる闇が其処にあった。
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