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シェリルは順調だった。相手は24サーチライトと同系統の監視系魔法「コメットビット」。簡易的な召還体に術を組み込んで操作するタイプ。コメットビットは敵と認識した相手を殲滅するまで攻撃する。
ノートパソコン程の大きさに卵形の丸みを帯びたフォルム。全身に付けられた斑点はクレーターを思わせる。
必要な情報は、それだけ。それだけでいい。
後は舞うだけ。ステップを踏み、ターンを決め、柔らかく着地する。コメットビットが放つ光弾を回避し、手にするレイピアで一機ずつ確実に叩き落とす。
まだカヴァーアイは使ってない。使うまでも無い。
(ちょっと…楽かも…。)
不敵な余裕が勝手に芽生えてくる。コメットビットはシェリルに取って足止めにもならない。
「デュアルビジョン。」
コメットビットが一斉に見当違いの方向を見る。その隙にシェリルはレイピアを掲げる。
「フラッシュダスト。」
細かな光の欠片が舞い降り、一挙に拡散した。小粒な弾丸に貫かれたコメットビットは一斉に爆発して消え去る。
「……。」
コメットビットが粉塵になり果てる中、シェリルは思索する。これで終わりな筈が無い。カヴァーアイが使える自分を試すのにコメットビットは役不足だ。監察員もそれくらい把握しているだろう。
「まだ終わっていない…。」
シェリルは前方に進んだ。仲間の状況を掴む術も欲しい。ただ敵を倒すだけでは今回の目標は達せない。
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