28.ランダムナイトメア

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「っ!!」 ドアを開いた瞬間にシェリルは身を屈めた。頭上を凄まじい勢いで物体が通り過ぎる。止まらず前転して距離を取る。 「アレはっ?!」 甲高い、超音波のような起動音をたてながらその物体は宙に佇む。尖鋭な突起を銀色に輝かせ、尻尾のように六本の鎖を後部に生やしている。 「簡易召還体…?!」 コメットビットより大型で速い。殺意も明確に表している。 簡易召還体は突起をシェリルに向けると、加速した。 「またっ!」 レイピアで叩き落とそうと構えると、背後から別の気配を察した。シェリルは後ろを見ずに横に飛んだ。両目の前に、カチューシャ型のゴーグルを表出させて。 同型の簡易召還体が四体、空振ったまま空中を旋回している。起動音が重なり合い、木霊する。 「カヴァーアイ…!」 余計な感情を出している余裕は無い。ここのフロアはこれだけらしい。なら突破するのみだ。 「ジューンレイン!」 足音も無く、空を滑るが如く闊歩する。簡易召還体の距離、位置、角度、座標全てが概念的な形状を以て頭に流れ込む。後はそれらが算出したスコア通り、踊るだけ。 簡易召還体はシェリルに呼応して散開する。だが、対応したシェリルは予測を上回った。 間近に迫る人影。レイピアに反射する光が閃く。
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