28.ランダムナイトメア

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簡易召還体は焦燥しない。鎖を天井に突き立て体勢を変えて動きを変え、加速に磨きをかける。 「カヴァーアイに付いて来ている…!」 驚愕しながらもレイピアを振るって簡易召還体を遠ざける。3Dの世界の中、標的の位置は完全に捉えている。後は極限まで磨き上げられた身体能力を用いて仕留めるだけ。どこまでも無限に広がり宇宙の中を奔るように、シェリルは躍動する。 だが相手も容易く仕留められる立ち回りはしない。向こうは向こうでシェリルの軌道を察知して先回りしようとしている。 隙を伺い合う両者の対局は続く。端から見れば捉える事すらし難いだろう。常人離れした高速の応酬が繰り広げられる。 (不規則的な動きだけど…役割は読めてきた。) シェリルの思索の網に、相手は捕らわれていた。 「そこっ!」 確実に一体を撃墜出来る位置に立った。 が、数発の光弾が行く手を阻む。 「っ!!」 シェリルは間合いを引き離した。状況を視認して、息を飲む。 コメットビットが十数体浮遊している。 (そんな…?!この部屋はあの五体だけのハズじゃ…新しく投下された?) だがそんな気配は無かった。元々いるのなら最初から察知するし、投下されたその兆しくらい掴める。ドアや投下口が稼働した素振りも無かった。それらは文字通り音も影も無く現れたのだ。
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