28.ランダムナイトメア

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コメットビットの出現の原因を探り当てるまも無く、コメットビットと簡易召還体はシェリルに追撃を仕掛けてきた。 簡易召還体は直線的な、コメットビットは曲線的な起動を描く。複雑化されたシュプールはそれまでより一層捉え難い。簡易召還体は突起で、コメットビットは無数の光弾を繰り出す。 「…っ!カヴァーアイ!」 ゴーグルが慎ましやかに煌めいた。光を往来させて空間をスキャミングする。そして相手の高速攻撃が当たる直前に、シェリルは飛び退いた。 実質的な数だけが問題じゃない。光弾と鎖。物理的接触が可能な要素全てが危険性を孕んでいる。確実に対処しなければカヴァーアイを以てしても回避しきるのは難しい。 シェリルは壁、天井を利用して立体的な動きを見せるがコメットビットの光弾に足止めされてしまう。弾数が多過ぎる。腕を増やすなりしないと対処しきれない。 そうも云ってられず、シェリルは再アタックする。全身の筋肉、バネを隈無く使い、レイピアで弾き返す。 刃を突き出し、振り下ろし、振り上げ、振り回し、柄を回して向きを変え、薙ぎ払う。全身の懸命なサポートがあってこそ可能な速度と精度だ。しかしシェリルの体にも負担が掛かる。 「んくっ…!」 不吉な感触が脚部から伝わる。焼ける痛みが肌の下で滲み始めた。 それで僅かに動きを宙で鈍らせた所を、簡易召還体が突く。 「くあっ!」 肩を掠めただけで済んだが衝撃は伝播する。シェリルは体勢を崩され、跳躍を途切らせた。 「力が足りない…。」 シェリルは唇を噛み締めた。カヴァーアイの問題じゃない。カヴァーアイの力が加わっても自分自身の力が足りない。あれだけの数に対応出来る手段が無い。
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