28.ランダムナイトメア

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(使うか…。) すんなりと決断した自分に、正直驚いた。今まで頑なに居座っていた葛藤や迷いが何だったのかと思う程。力の背景にある事情に何一つ足を止める事無く、必要だからそれを選択した。 ただ、それだけの事。 息を、大きく吸った。肺を酸素の海に溶かすように、深く、満遍なく。顔は紅潮している。体が火照っている。形の良い胸周りや首筋にはうっすらと汗ばんでいる。 一先ずクールダウンだ。相手はこちらの変化に気付いて、様子を窺っている。折角の間は有効に活用しよう。 シェリルは、息を吐き出した。今度は酸素の海を干上がらせる。干潟が浮き上がるように、肺胞を酸素の海から救い出す。 十分に酸素は行き渡った。脳は鮮明に、クリアに働いている。先程の衝突で軽い脳震盪があったが、今はリラックスと豊富な酸素の効果で和らいでいる。 (ちょっと…興奮している?) 実戦の中で感じた事の無い高揚が胸の中に沸々と沸き立っている。使命、責任、孤独、過去。いつも両肩に張り付いている錘が無い。軽やかだ。 今の戦いは独りで戦っている訳じゃない。たまたま今は、隔離されているに過ぎない。最終的な目標は皆で解決せねばならない。遅かれ早かれ集まらなければならない。 「繋げなきゃ…!」 翡翠色に瞬く瞳は覚醒する。 「我に戴かれよ、エヴァ=グリーン。」
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