29.マインド・コンプレックス

3/21
前へ
/913ページ
次へ
「暖かく励ましゃ返してくれるワケじゃないんだ。過程と結果に冷徹にケチをつけるのが俺達の役目。成長への一番の近道さ。」 「湿気たコト云うんですね。」 「いつだって物事はシビアだ。」 フレンシェルの言葉には不満が混じっている。ジョゼフは構わない。そんなジョゼフにフレンシェルは嘆息した。 「正直最初の実技試験にしちゃ難しすぎると想うんですよ。特殊型のデウスエクスマキナに簡易召還体シルバーワスプ、挙げ句にカークス、オマケに…。」 「カークスに関しては理事長の志向だろ。シオだけ特別扱いなのは頂けないけどな。」 「シオの実力考えてなら当然じゃない。」 「ダンジョンプレイ見ただろ?サシはいいが連携が出来ない。機械的に敵に挑んでいる、相手の力云々分析せずにな。十二分に未熟だよ。」 「じゃあ何でカークスをぶつけたの?」 「理事長のお心のままに。」 知っているようで知らない答え。時折見せるのらりくらりとした一面だ。 「じゃあ彼は?何で生徒が試験官やっているのよ!しかも一年生が…。」 「そこはコンスタンティノーブルの意志だな。元々優待生だし試験の必要は無いやら…こじつけにも程がある。」 苦々しくジョゼフはボヤいた。「彼」の存在が余程不満らしい。一頻り顔をしかめていたが、すぐに真顔に戻した。 「上手くやれるかな…。」 「お前が気負ってどうすんだ。」 「背中くらい、押してあげたいじゃないですか。…大人になると、若い子の成長くらいしか楽しみが無くてさぁ。」 「婆臭いな、お前も。」 シニカルながらも、ジョゼフはなだらかに答えた。
/913ページ

最初のコメントを投稿しよう!

863人が本棚に入れています
本棚に追加