29.マインド・コンプレックス

5/21
前へ
/913ページ
次へ
エヴァがヴェールを翼のように広げた。大気中の光を集め、より強い光輝を放つ。光は徐々にシェリルの体に浸透し、輪郭全体を包み込む。 「エンドレスサマー…!」 消えた。 少なくとも、シルバーワスプ達にはそう認識した。カメラ、サーモグラフィー、レーダー全てからシェリルの存在はすり抜けた。彼らは無言で驚愕する、慌てる、惑う。 コメットビットが一体、両断された。掻き消えるように消滅する。 シェリルの攻撃と判断したシルバーワスプ達は散開し、光弾をばらまいて牽制する。気休めに近いが無いよりマシだ。彼らは無為な抵抗に縋る程、無意識に追い詰められていた。 エヴァ=グリーンの能力は閃光系と幻覚系、身体強化系魔法の同時発動と爆発的な向上。相手の視界を攪乱させながら相手の力を凌駕する。カヴァーアイの空間把握能力強化も加算されると彼女は実質的に、世界を支配する。 光の軌道に乗った高速移動、光の粒子を纏ったレイピア、敵の位置を立体的に認識する能力、自らの痕跡を消す幻覚。全てが彼女に力を与える。 (一体……!) この速度の中思考が追い付くのがシェリルには常々不思議だった。自らの力ですらどうにもならない流れの中でも、心はちゃんと彼女に掴まり、機能している。 (私はまだ…考えていられる…!) 自らの内にある確かな感触をバネに、シェリルは奔る。
/913ページ

最初のコメントを投稿しよう!

863人が本棚に入れています
本棚に追加