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エヴァがヴェールを翼のように広げた。大気中の光を集め、より強い光輝を放つ。光は徐々にシェリルの体に浸透し、輪郭全体を包み込む。
「エンドレスサマー…!」
消えた。
少なくとも、シルバーワスプ達にはそう認識した。カメラ、サーモグラフィー、レーダー全てからシェリルの存在はすり抜けた。彼らは無言で驚愕する、慌てる、惑う。
コメットビットが一体、両断された。掻き消えるように消滅する。
シェリルの攻撃と判断したシルバーワスプ達は散開し、光弾をばらまいて牽制する。気休めに近いが無いよりマシだ。彼らは無為な抵抗に縋る程、無意識に追い詰められていた。
エヴァ=グリーンの能力は閃光系と幻覚系、身体強化系魔法の同時発動と爆発的な向上。相手の視界を攪乱させながら相手の力を凌駕する。カヴァーアイの空間把握能力強化も加算されると彼女は実質的に、世界を支配する。
光の軌道に乗った高速移動、光の粒子を纏ったレイピア、敵の位置を立体的に認識する能力、自らの痕跡を消す幻覚。全てが彼女に力を与える。
(一体……!)
この速度の中思考が追い付くのがシェリルには常々不思議だった。自らの力ですらどうにもならない流れの中でも、心はちゃんと彼女に掴まり、機能している。
(私はまだ…考えていられる…!)
自らの内にある確かな感触をバネに、シェリルは奔る。
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