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鳳嘴が裂いた大気を紅く染め上げる。大気の断面は激しい熱を帯び、斬撃が躍進する毎に、幕のようにはためきながら拓かれていく。紅い煌めきのせいで進路は見えない。無機質な大気の壁を切り開き、不透明な紅い熱の道を斬撃は進み、
デウスエクスマキナ2に行き当たった。
デウスエクスマキナ2が攻撃を認識していながらも回避しなかったのは、超近距離に持ち込まれたのもあるだろうが、何より油断が大きかったのだろう。リクの力をプログラムは過小評価してしまっていた。
だから受けてしまった。
自分のボディに異変を感じたのはアウトブレイズドライブによって作り出された膨大な熱が引いた後だった。歪な金属音が体の中から鳴り出す。見れば頭部の右脇、肩から脚部まで紅い一線。熱を帯び、溶けた金属がこびり付いている。
右半身の感覚が無くなっていると気付いた時、デウスエクスマキナ2の体は分断され、倒れ伏した。
「…ハァッ…ハァッ…。」
リクは汗を拭った。渾身の力でアウトブレイズドライブを放った時に発せられた熱を浴びたせいでもあるだろう。ドッと流れ出た汗がシャツをビショビショに濡らす。
リクは鳳嘴を取り落とし、ブレザーを脱ぎ捨て、シャツの胸元をはだけさせた。汗に濡れて重くなった髪を描き上げる。
「決まってんじゃん。」
スクァッシュがトテトテと歩み寄った。ダメージはさほど無かったらしい、息災な姿にリクは胸を撫で下ろす。
「おう。」
リクは笑った。
疲れが降り積もった体でも、自然に浮かんだ、満面の笑みだ。
「やれたよ、どーにかな。」
「リクならやれんだよ。」
「御主人を持ち上げるなんて賢くなったじゃん。」
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