29.メイク・ミー・ハイ!

3/16
前へ
/913ページ
次へ
と、云う映像を、コメットビット達は見ていた。 網を閉じ、空中へ運んでいった時に囚われのシェリルは消え…床に密着しているシェリルが、レイピアを光らせた。切っ先から飛んだ光の楔がコメットビットを散らす。 コメットビットが全機爆散したのを背後で感じた瞬間に、シルバーワスプが突っ込んで来た。 (コメットビットを囮に…!) 真っ正面からシルバーワスプに近付いて、レイピアで先端から真っ二つにした。 しかし開かれた機体の陰からもう一機。 「っ!!」 対応しきれない。 本当の囮は両断された方。 前傾姿勢になっている上、懐に入られ過ぎていた。 レイピアでは間に合わない。 「アァアアアアァァアッ!!」 万事休したシェリルは咄嗟に左手で突起を握り締め、受け止めようとする。 掌を血で滲ませながらも、強く強く握り締めて、 力付くで矛先を床に叩きつけた。やるせない鳴き声を上げてシルバーワスプが転がる。 そして賺さず、シェリルに息の根を止められた。 ---お怪我を…。 エヴァに諭され、左手を開くと真一文字の切り傷があった。浅いが、赤々とした血が滴っている。 「大丈夫。」 シェリルは左手を握り締めた。 「痛っ…!」 走る痛み。痺れを含み、鋭く肌を射す。 ただ其処に、云いようの無い達成感を、シェリルは覚えた。 「でも…」 此処からだ。 壁を見透かしてしまうくらい、強く焦点を重ねる。 その先にある魂に、届かせる為に。
/913ページ

最初のコメントを投稿しよう!

863人が本棚に入れています
本棚に追加