29.メイク・ミー・ハイ!

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「ウィル・オブ・ウィル、その意味は『意志の遺志』。使用者の意志を存分に反映させられる。この武器の最大の利点はその柔軟性だ、思い描く通りに力を具現化させる。だから、ウィル・オブ・ウィルの力を決める最大のキーポイントは自分の意志だ。」 『……。』 男は無言でラウルの語りに耳を傾ける。 「僕はこの意志を譲らない。これは何があっても僕のモノだから。何にも変えられない、ただ一つのモノだから。」 『それを云うのはどちらの口だ?』 「ラウル・クラウスターだ。」 男は溜め息をついて俯いた。 『…第二の事柄。生徒会へ参入の意志の有無。』 「…!君はレイルさんの…!」 『お前は生徒会に入る意志はあるのか?』 問いを許さず、冷淡に質す。 「…今は、無い。」 意図を含めた答えに男は首を傾げた。 「ウィル・オブ・ウィルは…欠片だけど、僕だけの色をつける事が出来た。だけど、僕自身はまだルーイ・クラウスター・ジュニアを僕のモノに出来ていない。いずれ授かる冠は、今はまだ遺物に過ぎないんだ。」 『お前のモノに、する…?』 「ルーイ・クラウスター・ジュニアが僕の全ての一面に、心の片鱗にしなきゃ…僕はこの名前に飲まれてしまう。自分に課せられたモノに負けたらダメだから…。今は、もっと自由に色んな人と触れ合って、語り合って、学んで、知って…。ありのままを見つめて生きていたい。」 ラウルの表情は輝いていた。くるくると瞬く瞳が底知れない希望を感じさせた。
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