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「何で先生がいるんすか…?!」
「監察員が試験に入っているなんて聴いてないよ!」
「シオ相手だからってやり過ぎだろ?!」
「二人共集中!」
議論を交わし合うリクとラウルにシェリルが鋭く一喝する。カークスから闘志は消えていない。低く忍びやかに燃えている。
が、唐突にそれが萎んだいなや、カークスの姿が消え、隆起した土塊だけが残された。
「「「っ!!」」」
四人の認識に捕まる前に、カークスはヒラリと距離を置いた地点に着地した。
バルディッシュを懐から出した布で拭きながら、カークスは無関心さを露わにして云った。
「い、やぁ~…。試験ー時間ー終了ー間近ぁを、伝えたぁくてやって来たとぉ、こぉ、を狙われるなんてぇ、ついてなぁいー…。」
いつもの口調に戻している事がより白々しさを増している弁解は、シオには本来不快なモノだろう。だが、今のシオには不快さを感じる余地は無かった。
「伝えるんならもっとコソコソやれよ…。」
「って終了間近?!急がないとヤバいんじゃない?!」
ウンザリした空気から一変、忙しない焦燥感が起きるが、それに乗る余裕すらシオには無い。シオだけが別種の表情を見せていた。
「………!」
「シオ?大丈夫?」
何かしらのダメージを受けているのかと心配げに顔を覗き込むシェリル。
「壁っ…」
「壁?」
「壁…消えた…。」
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