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「え?」
「壁、消え…何で?!」
呆気にとられるシェリルの顔を見返し、シオは錯乱している素振りで疑問を連呼する。
「何故って…あの壁は初めから存在してなかった…ただの幻だったから…。気付いてなかったの?」
「幻…?!」
完全にシオは気付いていなかったようだ。これにはリクとラウルも驚いた。
「お前判らないままあんな攻撃したのか?!」
「道理で力が入り過ぎてたんだ…。」
「俺ずっと…勘違い…。」
云い終わらない内にヘナヘナとシオは崩れ落ちた。肩透かしと同時に蟠っていた緊張が零れ出す。
「なんか…ゴメン。」
「何で謝んだよ!お前の術が合図になったし、目障りな壁が消えたから結果オーライじゃん!」
「でも…壁のカラクリに気付かないなんて…不甲斐ない。」
すっかりショボくれたシオに何度もリクは励ましを入れる。重責を果たそうと息巻き過ぎたのもあるだろう。常に自分の行動と結果に意識を回すのは容易では無い。力みすぎた肩が抜けた後の脱力感は大きかったが、寧ろ清々しかった。
「カラクリに気付いた、ねぇ…。」
ぼそりと呟くカークスに、シェリルは云う。
「ワイルドキューブには初めから内部には何も設置されていない。ただ強力な幻覚魔法…アイボールペイント辺りでしょうか、が常に発動していて、壁や扉めいたモノが張り巡らされているだけ…ですよね?」
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