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「御名、答~…。」
「初めから、あるんですよね?幻覚に阻まれているだけで、本当はすぐ側に見えている。
…セントラルコア。」
シェリルな導かれた視線は、壁やドアが消えてがらんどうになった殺風景な空間の中央に蕾をあしらったような宝石がスタンドテーブルに置かれていた。安い木材で作られた貧相なスタンドテーブルに対し、セントラルコアはサファイア色に輝く。その煌びやかさは群を抜いているが、見窄らしいスタンドテーブルと不思議に調和していた。つまらない雑木から思わぬ綺麗な花が咲いたように。
「御、明察…。」
カークスは諦めたように頭を振ると、スッと歩みを下げた。
「さっさと取って終わらせな。」
「…ハイ。」
気のせいか、初めて流暢な語り口を聴いた。シェリルは後ろ髪を引かれる思いを感じたが、ラウルに呼ばれてセントラルコアへ向かった。
(アイツ気付いて無かったんだ…。こっちに向かせ過ぎた…?)
やりすぎたと一瞬自省したが、ふと思い直した。
(だが最後に放ったエアリアルブルーは防がれる事前提、拡散させて壁を壊す狙いが現れていた。アイツは俺を倒す事に躍起になっちゃいない。俺を標的にしながらも、アイツの意志は仲間に向いていた。ハナから壁が何であるかは眼中に無し…だった訳、ねぇ。)
煙草をくわえたが、火を点けなかった。
「仲間、信頼、繋がり…。」
フィルターから伝わる煙草の香りが、煩わしかった。
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