29.メイク・ミー・ハイ!

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「ゴールイン、か…。」 遠い声で、ラウルは零した。何故だが皆静かになっている。ちょっとした脱力感。戦いの中で抱き続けた緊張から解き放たれて、心が緩む。 「んで、どうすんだ?これ。」 気を取り直すように、リクが云った。 「取り外せんのかな?…ってて、取れねーぞこれ。」 無造作にセントラルコアを掴むが、しっかり固定されているようで外れない。 「何かでくっつけられているんじゃないかな?」 「私にも見せて。」 ラウルとシェリルが近寄って細かに調べるがセントラルコアが動かない理由は解き明かされない。サファイア色の姿に重量感は感じない。接着剤の類で取り付けられている訳では無い。 セントラルコアは三人を前に、認めぬと尊大な態度を構えていた。 「シオ!お前はどう思う?」 「あ、うん…。でもリクに外せないモノを俺がやれるかな…。」 リクの隣に立って、シオはセントラルコアを覗き込んだ。楕円形の表面に、縦長の自分の顔が写り込む。 「魔力の気配はある…何か術が施されているのかも。」 「ああ?また最後に面倒かよ。」 「あれ?これ…」 シェリルがセントラルコアに手を置いた。 「温かい…。」 滑らかで冷ややかな外観からは想像もつかない、和やかな温もりが其処にはあった。
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