30.グッド・ナイト・キス

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「学校は…どうだ?上手くやっているか?確か…実技試験がある時期だろう、勉強や鍛錬は捗っているか?」 どうしてこう矢継ぎ早に話してしまうのか。 どうしてこう話題の引き出しが少ないのか。 シェリルの事情に配慮出来ない自分の不器用さに嫌気が差す。 『まぁまぁ…かな?実技試験は、合格しました…。』 「あぁ、そうか、良かった…。」 会話が途切れる。レグナンは頭の中で言葉を手繰るが何を話せばいいか判らない。 「良かった…元気そうだし…良かった…。」 感極まりかけている。沸々と喜びが泡立ち、頭を霞ませる。 『友達と協力して頑張れたから…。それなりに、毎日楽しく過ごしています。』 「辛い目に…遭わなかったか?」 『…っ。』 不躾だが、気にせずにはいられなかった。 『あった…よ、うん。正直…一度逃げかけた。』 中学の時のシェリルが頭に浮かぶ。全てに背を向け続けた、華奢な体。 『でも、支えてくれる人がいて…守ってくれる人がいて…。その人達のお陰で、徴兵法で苦しんでいる人達と向き合えた、受け止められた。』 「…すまない。お前が、負うべきでは無いのに…。」 『ううん、違うの、お父さん。』 優しく、シェリルは否む。
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