30.グッド・ナイト・キス

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『本当は…誰もが、誰かの心と繋がっている。ブリジット達…徴兵法に苦しんだ人達はそれを忘れているだけ。過去に、悲しみに囚われて…独りになっている。私は、誰でも持っている資格を使っただけ。手を差し伸べて、受け入れる事。 それに私は…何があってもお父さんとお母さんの娘だから。これは否定出来ないし…したくない。私が二人に支えられているように…私も支えなきゃいけないから。お父さんが負う咎を…私だって受け継ぐ覚悟は出来ている。』 レグナンは嘆息して、俯いた。まだ十六にもならない少女が、こんな高貴な事を云うのか。 自分の愚かしさがシェリルにこうも重大な決断を、変化を強いたのだと思うと、罪悪感が大きく波打った。 「長いようで…短い一ヶ月だ…。」 『え?』 「そんな間に…お前はこんなにも変わってしまった…。遠退いた気がして切ないよ、シェリル。」 『…違うよ、お父さん。私は変わった訳じゃない。友達が私を、大きな繋がりに迎えてくれたから…。成長出来たの。』 「成長、か…。」 娘が、彼女だけの道を歩んでいく事。 もうその背中を見送るくらいしか自分には出来ない。どんなに侘びしかろうが、追い付く事は叶わない。 「…息災に、それだけは守りなさい。」 『…うん。』 「ヴァネッサに代わる。」 受話器を渡され、一瞬ヴァネッサは感情を高まらせるが、すぐに抑えた。
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