31.彼らの呟き

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「フられちゃった。」 開口一番、アルフレッドに授けられた単語はそれだった。突拍子も無い台詞だが、アルフレッドは表情に出さない。 「どなたにでしょうか、会長?」 「ルーイ…ラウル君にだよ、アルフレッド。」 「スティンガー様からの報告が来ましたか?」 「その通り。」 レイルのプライベートルーム。両ノ手が会議で使うパブリックルームに隣接する形で作られた部屋だ。 二十畳はある部屋にあるのは二つのソファーにローテーブル、パソコンが置かれたデスク。それだけだった。事務処理や休憩に必要な道具以外何も無い。広さが相まってどことなく殺伐とした雰囲気が漂う。レイルの華々しい私生活の陰にしては随分と物寂しい造りだった。そこだけが、空洞となっているように。 「自信あったんだけどね。ラウル君、中々誠実で真面目だよ。あんだけコンプレックス抱えていたのに、もう克服しつつある。」 「いずれは生徒会に入るのでしょう?」 「ファーストインプレッションが悪いからなぁ。一年後まで伸びそうだ、此処が空いた時。」 ヘラヘラとした手振りで、レイルは自分が占有しているデスクを指差す。 眉を顰めたが、アルフレッドは間髪入れなかった。 「あの者は元々あなたと既知の人間だったわけではありません。渡り鳥が止まり木に止まらなかっただけの事。」 「嘗て親しかった上級生の肉親なら情を感じずにいられないんだ。三年生にでもなるとね。」
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