31.彼らの呟き

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「生徒にした以上…シオのこの先の判断、行動は全部彼の自由にさせてやりたい、させてやらなきゃならない。愛情であり、義務だ。しかし、背信的だが、私はシオを監視し…場合によっては制約しなければならない。全く以て…致命的な矛盾だ。」 「それが大人ですよ。無理も道理も当てにしてはならない。」 ベルクロフトのフォローは、ただ現実を現実たらしめるだけだった。 「あの~…。」 やるせなさが漂う場にすっかり萎縮した声が響く。 「ンな調子で話されると入りにくいって云うか…なんか悪者みたいになんないスか?」 「おお!進んでヒールを受け入れてくれたカークス・バレンタイン君!」 「何の嫌味?!」 「いやぁカークスが汚れ役を引き受けてくれるとはねぇ…。」 「教師の鑑。」 「何で二人まで加勢?!」 悪ノリする二人に突っ込むカークスを理事長が手招く。 「まぁまぁ。君には初担任の上に難儀な注文をしてしまってすまないね。」 「相手がシオの分まだマシですよー。」 露骨に不満を醸し出すカークスだが、理事長は平然と流す。 「ほう…。で、どうだったね?」 「何がスか?」 「シオと戦って、自分の生徒に負ける気分だよ。」 まただ。 カークスはウンザリする。 どうしてこう、俺の周りにはこんなのしかいないんだ。
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