32.少年少女

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「ようこそ!私達の秘密基地へ!」 エリスが畏まった素振りで、シェリルを迎え入れた。 森の中で、そこだけは開けていた。木々が倒されている訳では無く、柔らかな苔と艶やかな露草が地面を覆っているだけの小さい空き地。そしてその空き地の真ん中にプラントの残骸が横たわっていた。 見事なまでに潰れ、あちこちに欠片を散らしている。アスファルトにも、大理石にも似つかない素材の欠片や巨大な残骸が仄かに光を帯びている。それが周囲の森に届いていたのだ。 「綺麗…。」 それ以上の言葉は出なかった。 素材は生きて鼓動する星のように、温かな光を放つ。強く発せられない、日だまりのような柔らかさと軽さを持つ光だ。体全身に染み込む感覚を与えてくれる。 「吃驚した?」 「とっても…。」 「良かった!おーい、みんな!」 エリスの呼び掛けに人影が揺れる。目を凝らせば、先客が集まっていた。 「おー、やっとか。」 「宴じゃ宴じゃあ!レッツパーリィ!」 「シャーロックウザイ。」 「先生に見つかっちゃうよー。」 「そん時はシャーロック盾だねぇ。」 「…酷だな。」 声が暗闇の中で咲き乱れた。
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