32.少年少女

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「さっき、お父さんに電話したんだ。」 「お父さん?」 血の気の無い問いが気になったが、頷くだけでシェリルは進めた。 「なんか急に…話したくなってね。一カ月くらい話してなかったのもあったし…。」 シェリルの心情をシオはイメージしていた。自分に置き換えて、その立場で思考する。 「心細く、なったのか?」 「多分、そうだと思う。…ううん、やっぱわかんない。いつも皆といるのにね。たまたますれ違っているだけなのに…勝手に寂しがっているだけだもん。」 「そんなんじゃないよ。自分とか、周りが分かんなくなる事もある。」 「あぁ…そっか。じゃあ、私はそうなったんだ。」 シェリルはオレンジジュースを景気良く飲み干した。 「そしてね、お父さんと、お母さんと話したら…すごいスッとした。着地する足場を見つけたみたいに。ちょっと前までもう嫌いで嫌いでしょうがなかったのに…。私がシェリルだって、シェリル・ハウルロイドだって。私を思ってくれている気持ちから…教えてくれた。」 「…そっか。」 「此処に来て、同じ気持ちなんだ。皆が付き合ってくれる私がいるって…再認識出来た。」 「良い事だ。」 シオははしゃいでいるシャーロックやエリス達を見やった。 瞳に入り込む像が、愛おしく輝く。 「俺も…同じ気分。」 「ホント?シオ…」 「おーい!」
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