32.少年少女

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リクの呼び声が入って来た。 「ジュースとかまだあっちのボックスにあるから。好きに取ってくれよ。」 「そんなたくさんのジュースどっから持ってきたの?」 「エリス曰わく…企業秘密だと。」 シェリルはクスクス笑った後、立ち上がってクーラーボックスに歩み寄った。 「…立ち聞きしてたでしょ?」 図星を突かれてリクは肩を震わせる。 「…たまたまだよ。」 バツの悪そうな顔をしたリクを愉快げにシオは見上げた。 シェリルはコーラのボトルを手にエリス達と談笑している。シオとリクは、肩を並べた。 「リクは本当…皆の事気にしてばかりだよね。」 「…性分だよ。」 「悪くないよ、全然。悪くない。俺だってそうだもん。」 「そうかもな。でも、お前は…変わった、かも。」 「え?」 シオはパチクリと瞼を開閉した。 「入学した時はさ、無愛想でやたらキョロキョロしている印象だったんだ。なーんか…迷い込んできた野良犬みたいだった。」 「野良犬…。」 「あ、悪い意味じゃねーよ?ただ…繋がっていない感じがした。でもさ、今は違う。大分変わった。すっげー友達思いで…直向きで…優しい奴で。いや、違う、元々お前はそんな奴なんだ。今まで隠れていたモノを、お前が見せてくれるようになったんだ。それが、今のお前。」 リクの言葉が徐々にシオを象っていく。
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