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『ゆう、今宵は何処へ行くのだ?』
背中越しに話し掛けてくる声に、僕はいつもの様に振り返りもせず適当に答えた。
「別に、これといって目的地はないよ。ただブラブラするだけ」
『そうか、それはとても無意味なことだな』
相手も僕の態度に気にした様子はなく、いつもの様に皮肉混じりに返してきた。だけど、僕もその嫌味を気に留めることはない。どうせお互い様なのだから。
時刻は午前二時を回ったところ。当然の如く家の住人である両親は既に寝ている。それだけでなく一般的な家庭であれば、大抵は就寝していておかしくはない時間帯だ。
そんな中、僕は一人出歩こうとしている。
今し方話した通り、特に目指す所はない。ただ、その辺を歩き回るだけ。警察にでも見つかれば色々と聞かれるかもしれないけれど、このご時勢だ、コンビニに行く途中とでも言えば深くは食い下がってこないだろう。
『よし、それじゃあ行くぞ』
「うん」
大きな音を出さないようそっと家を抜け、僕は一人真夜中の散歩へと出かけた。
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