はじまりの

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『ところでだ、いい加減私もコーラが飲みたいのだが』 そう切り出したのは、コンビニ出てから十分程経った頃だ。 言われてみれば、まだビニール袋の中には蓋すら開いていないペットボトルが一本あった。 僕は袋の中からそれを取り出し、彼女に頭側を向けて差し出す。 ペットボトルを僕が掴んだまま、彼女はキャップを捻る――と。 プシャアァァ、と炭酸が泡立ちながら彼女目掛けて飛び散っていった。大した勢いではなかったけれど、飲み口が良い具合に彼女の方を向いていたため、思い切り彼女の顔の方へと飛んだのだ。 ああ、そういえばレジに行く前に落としたっけ。それとここに来る途中、二度程電柱にぶつけたな。あとは嫌がらせで、こっそり何回か強く振ったりもした。これだけ揺れれば中が飛び出るのも当然か。 まあ、僕に掛かってないから大した問題じゃない。彼女にしてみても、コーラが自分の方へ飛び散ったぐらいでは何てことではないだろう。それよりも彼女は、 『ああっ、中身がこんなにも減ってしまった! おい、ゆうっ。もう一度コンビニに行くぞ!』 分量が少なくなったことを問題視しているからだ。 「嫌だよ、そんな面倒なこと。もう今日の分は飲んでいるんだから、それで我慢しなよ」 『そんな殺生なっ!……いや、待て。もう日付は変わっている、だからまだ今日の分は飲んでいないぞ』 また屁理屈を。 コーラは一日一本だと約束をしている。今買ったのは特別だ。 もちろん彼女だけ嗜好品を制限させるのは不公平なので、僕も煙草は三日に一本にした。今はそれほど吸わなくなったので、僕は全然困ることはない。けれど、さっき話した通り彼女はコカイン……もといコーラ中毒なので、とにかく飲まなければ気がすまないのだ。 「じゃあ今日の分はそれだね」 『なにっ、あわわわっ。やはり今のは嘘だ、嘘。これで我慢しよう……』 その表情は、さっきよりも悲しそうだ。
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