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「……そう」
数秒の間を空けて一つ言葉を溢す。そのまま小声で何か一人で良く分からないことを喋りだした。良く分からないので、何を言っているのかは僕には分からない。
「失礼、人違いだったみたいです」
そう言うと、足の向きを180度回転。踵を返して僕の視界から歩み出て行った。
最初から最後まで一方的に話され、一方的に去って行く。本当に良く分からない人だ。
女の子が公園から居なくなるのを待ち、それから僕は外に出た。
小さな家の中は熱気が篭っていたせいで、僕の背中には汗で服が張り付いている。ついでに額にも汗を浮かばせ、前髪が張り付いている。
今手に持っているのが紅茶とコーラでなくミネラルウォーターであれば、迷うことなく頭から撒き散らしていたのに。
『何だ今の娘は。こんな時間に怪しい奴だな』
いつの間にか戻ってきていた彼女が、僕の隣でそう一言洩らす。
「そうだね、あれで仮面を付けてたら完璧に変態だね」
彼女に思い切り頭を叩かれた。
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