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「とりあえず、アンタどっから来たんだ」
俺はソファから降りて床に座り直し、目の前にちょこんと座って辺りを見回す見知らぬ女性に尋ねた。
尋ねながらチラッと彼女の容姿を見る。
傷だらけの手足に何故だか耳まで引っ掻いた様な傷。
胸元は嫌に赤黒くなっていてふわふわの真っ白だったであろう薄汚れたドレスの重量を増しているのは確実だ。
結論、気味が悪い。
一方俺が気味悪く思っているとも知らずに彼女は澄んだ瞳でこちらを見つめていた。そしてためらい無くテレビを指差したのだ。
そこには俺が流したままロクに観ていなかったファンタジー映画が映っている。
ドラゴンを倒して塔に幽閉されたお姫様を助け出すという何ともベタな映画だが、不思議なことにお姫様が居るはずの塔には誰も居ない。
俺の住む部屋は3階のオートロック。
俺に気づかれずに部屋に入るなんてまず無理だ。
「なんか頭痛くなってきた。」
小さくボソッと呟いた俺の言葉は彼女には届かなかったらしく首を傾げていた。
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