21人が本棚に入れています
本棚に追加
きらり、右手の薬指の指輪が、淡く光を放つ。サイズが合わないかもしれないけれど、と言われて渡された誕生日プレゼント。あいつは忙しい人だから、私の誕生日よりも一週間前にくれた。フライングもいいところ。でも嬉しかった。あいつ、私のために、全然似合わないアクセサリーショップで、何時間も悩んだのだろうなと思ったから。
凝り性なあいつのこと、値段そこらは、あいつの家は無駄に金持ちだから気にしないとして、私に似合うかとか、気に入るかとか、趣味はどうだろうとか、考えたに違いないのだ。それを思うだけで、愛おしさにくすくすと笑いがこみあげてくる。
くれた小さな包みに入っていたのは、飾りも何もないシルバーリング。其れは本当にきれいで、シンプルで澄んでて、あいつみたいだった。
あいつは昔から、私みたいな大雑把な人間からすれば病的なくらいに細かいバリバリのA型。中学の時、ばれない様にとこっそりと付き合って居た私とあいつはなかなか外で会うことも出来なかった。塾の講師だったあいつと、其の生徒である私との禁断の恋。ばれる訳には、いかなかったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!