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付き合いだしたその年の誕生日、あいつは私にプレゼントをくれた。指輪、って言ったのに、何を間違ったんだか、ネックレスを買ってきてくれた。それも確かに可愛かったし、デザインは綺麗なシルバークロスで私の趣味にもサイズすらびっくりするくらいぴったりだったのだけど、何で、って聞けば得意げに言ったのだ。
『お前の二十歳の誕生日に、指輪は取っておく。』
その時は思わず吹いてしまったけど、今年私は二十歳になる。其の誕生日プレゼントとして、銀色のリングをくれたのだ。でも、やっぱりこれは私には合わないよ。薬指より、ちょっと大きい。ていうか、恋人の首周りよりも、恋人の薬指のサイズくらい把握してろよ。
それでも縋るように今日も薬指に指輪をはめる。銀色が、夜の月明かりで淡く光った。其の光は、どこか儚くて、消えてしまいそうで。
一年前から同棲している私たちだったが、あいつは塾の講師で私は一介の大学生。生活リズムはまるで合わない。でも、約束をしていた。朝御飯だけは、例えどれだけ眠くても、七時には必ず二人でとること。そうして、昨日あった事の報告をすること。報告といっても、雑談程度だけどね。其れが、もう何日も絶えている。たった一人で二人の部屋にいる私にはちょっと、寂しすぎた。寂しすぎて、泣きたくなって、馬鹿じゃないの私、って思ったら本気で泣けてきて。
私、志藤(しとう)陽(ひなた)の恋人の春日(かすが)柳(りゅう)が行方不明になってから、七日が経とうとしていた。
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