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「昼休み、また言い寄られてましたね」
放課後、昨日と同じく涼しい図書室で向かい合いながら、昼休みに目撃した光景を何気なく話すと、先輩は照れ笑いを浮かべる。小さく頬を掻きながら、嬉しそうに話しだした。
「言い寄られたってゆーかね、あれは……応援されたんだよ」
「応援、すか?」
うん、と頷くと、机に肘を置き、リラックスした体勢を作り出してまた続ける。
「推薦、頑張ってくださいってね。びっくりしたよ。この事知ってるのって一部の人だけなのに」
なるほど、俺はその一部に入っているようだ。少し、嬉しくなる。
「まぁ多分、麻奈美あたりが言い触らしてるんだろうね」
苦笑に近い笑みを浮かべて、先輩はさらに姿勢を崩す。顔だけ真っ直ぐにしたまま机に突っ伏す体勢になった先輩は、ため息ともつかない息を一つ吐いて、
「後二ヶ月かぁ……」
と、力なく漏らした。
それは、弱気だとかじゃなくて、どこか疲れているような、そんな印象を受けた。
多分、推薦入試が終わるまでは、先輩が心から休めることはないんだと思う。先生や、さっきの後輩からの期待によるプレッシャーも少なからず感じているはずだろうし。
ふと、考えてみた。
少し疲れてしまっている先輩に、何か出来ることはないだろうか、と。
だって、目の前にこんなにもぐでっとしている先輩がいると、ほっとくワケにもいかないじゃないか。
何か先輩の好きな……好きな……。
あ、そういえば今日って……。
「先輩、今日姉ちゃんが家にいますよ」
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