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「それじゃあ夏芽、合格、本当におめでとう」
姉ちゃんの言葉で、四人の持ったクラッカーが一斉に破裂した。
軽快な破裂音の後、テープや紙吹雪がテーブルや床に散らばる。
「ありがとう! みんなありがとう!」
喜びの声を上げながら、隣の先輩はやっぱり涙ぐんでいた。もしかしたら、先輩は意外と涙もろいのかもしれない、なんて思えると、新しい先輩の一面を見ることができた気がして、少し嬉しかった。
「あなた達二人も、幸せにね」
向かいの姉ちゃんが続けて優しくそう言うと、その横の大引先輩もにんまり笑う。
「は、はい……」
先輩があまりに純情な反応をするものだから、俺まで先輩の赤面が伝染してしまう。
それでも、今俺はとても幸せだった。
不意に目の合った俺と先輩は、照れくさく笑い合った。
今日が初対面なはずの姉ちゃんと大引先輩は、いとも簡単に打ち解けた。今では大引先輩の彼氏の愚痴を姉ちゃんが親身になって聞いてあげてるほどだった。
「ね、レイ」
向かいの文句を、ジュースを飲みながらぼーっと聞いていると、先輩が肩をとんとんと叩いてきた。振り替えると、先輩の顔が少し近くてドキリとする。
「何です?」
コップの中を全部飲み干して、先輩の話す言葉を待った。
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