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「何の話してたの?」
人数分の皿とフォークを持って、先輩が隣に腰を下ろした。
「何でもありませんよ」
まさか、ヤるだのなんだの話していただんて言えない。
「ホントにぃ? なんだか怪しいよー?」
唇を尖らせながら、不満げに眉をひそめる。
「なんでもありませんってば」
さっきまで結構際どい会話をしていたからか、先輩の顔を見ると、なんだか照れくさい。向かいの大引先輩が、口に手を当てて笑いを堪えていた。
「夏芽のことよ」
口から手を離して、大引先輩はそれだけ言う。
「私のこと? どんな話?」
先輩が無邪気に訊いてくる。大引先輩が、ついにプッと吹き出してしまっていた。
「えっと……その」
くそ、何て説明すればいいんだよ!
俺は、余計なことを口にした大引先輩を心の中で恨む。
キラキラした目で見つめられると、ますますホントのことを言いづらくなってしまう。俺は、どうにか嘘を吐かずにさっきの会話を説明しようと、必死に考えた。
「だから、俺は、先輩が好きだってゆー……話っす」
考えた結果が、これだった。とうとう、大引先輩が声を上げて笑い始めてしまう。
「な、な、なんて話してるのよ、もう……」
先輩は案の定、頬を染めて俯いてしまう。あまりに露骨な反応を見せられると、こっちまで感化されてしまうじゃないか。
「ま、麻奈美も笑いすぎだよ!」
結局姉ちゃんが戻ってくるまで、大引先輩は笑い続けたままで、俺と先輩は赤い顔をしっぱなしだった。
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