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「じゃあ、また明日学校でね!」
別れ際、先輩は笑っていた。明るい声のまま、家の中へと消えていく先輩を見送りながら、俺も不思議と気分は晴れやかだった。
先輩と離れた今、並んで歩いた道を一人で戻るこの間でも、俺の心に寂しさが訪れることはなかった。
――明日も、また会える――。
この約束が、何より俺の支えになっていて、もう俺は、むやみやたらに先輩を欲しがることはなくなっていた。
隣にぬくもりの無い不安より、約束の尊さが上回っている。
こういう気持ちは初めての経験だけど、たぶん、俺は幸せなんだろう。
先輩という、この世で一番愛しい人と結ばれて、たくさん触れ合って……。
ふとした瞬間にもその人を考えてしまうのも、一緒に居たいと思うのも、手をつないでいたいのも、甘い言葉を言ってしまうのも、キスをしたいと願うのも……。
そのどれもが、沢村夏芽という人間にしか向けられていない感情で、何より素敵な想いで。
それを改めて実感できた今、震えるくらいに嬉しくなった。
だって……その"沢村夏芽"は、俺の先輩で、俺の大切な人で……。
雲一つない晴天の空を仰ぎ見る。日光の刺激を手で遮り、指の隙間から照らす輝きに目を細めた。
そう。高くて、届かないくらいに遠いようで、だけど、いつも傍にいて、俺を照らしている……。
俺の、太陽だから。
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