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担任のオッサンが解散を宣言してすぐ、俺はカバンを手にして一番窓側の席から誰より早く教室を出た。
慌てるな、と自分に言い聞かせても、教室を出た勢いそのままの駆け足を緩めることができない。
早く先輩に会いたいと願う一心が、俺を駆り立てる。
図書室が近づくにつれて、心臓の高鳴りは激しさを増す。
走っているからじゃない。目的地の入り口のその向こう。きっと、その人を見つけると今より胸はドキドキするに違いない。
やがてたどり着く、図書室の前。切らせた息を整える間もなく、俺は引き戸に手をかけた。
音を立てて開いた戸の中からは冷風が俺を包み、汗を忘れさせてくれる。
まだ僅かに荒い息を連れて、俺は愛しい人を探す。
見渡すと室内には受付のおばちゃんしかいなくて、小さくエアコンの起動音が響いている。
入り口から曲がって左の本棚に隠れた長机。そこに、ロングヘアーの後ろ姿が見えた。
そっと、後ろから抱き締めたい……。
衝動をなんとか我慢して、俺はその人を呼んでみる。
「先輩」
ロングヘアーがたなびいて、ふわりとこちらを振り向いた。
その大きな瞳が俺をとらえると、明るい笑顔が咲き誇る。
「レイ!」
幸せの音色が、俺の名前を紡ぐ。まだ出会い頭だというのに、あまりに愛しすぎて、俺は思わず小さな唇を奪いたくなってしまった。
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