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外は、まだまだ残暑を感じさせる日本晴れ。
だけど、つないだ手はお互いに離さなかった。
「私、服が見たいな」
「じゃあ、駅前に行きますか」
二人で手をつなぎながら歩く街並みは、いつもと違って見える。
まるでラブソングの一節のようなフレーズだけど、本当にそう感じられるのだからしょうがない。
この先、何があっても絶対に失いたくない温もりが、俺の手にある。
あのプールの時と同じ気持ちだ。先輩は、俺の全てをかけて守ってやりたい。
本当に、心からそう思うことができた。
――俺にとって先輩は、太陽。
いつだって、先輩は嬉しい時も悲しい時も、眩しいくらいに俺を照らしてくれた。
これからは、俺の方も先輩を照らしていこう。
先輩が俺にそうしてくれたように、心の支えに、そして全ての源になってあげたい。
先輩にとっての太陽が、俺につとまるのかは分からない。それでも、俺以外にはありえないのだから。
もしも先輩が沈んだ時は、どれだけ遠くたって、霞んでしまいそうなくらいに深くたって、俺が先輩を見つけてあげる。
二人で過ごす日々の中で太陽が隠れてしまっても、俺が必ず雲を晴らしてあげる。
だから……。
「ねえ、先輩」
「なぁに? レイ」
「ずっと、俺の傍にいてください」
頼りなくても、輝きが弱くても、いつか絶対に大きく光ってみせる。
「俺の隣で……笑っていてください」
てっぺんの見えないような階段も、登りきってみせる。
その隣に、並び立ってみせる。
――だから。
「……うん。ずっと、ずぅっと、私はレイの隣にいるよ」
――夏空に咲く一輪の太陽が、小さく微笑んだ。
そして、俺たちの終わらない明日を……おぼろげに照らしだしてくれた。
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