日差しと図書室

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「こんちは、何読んでるんすか?」  机の上にカバンを置く。先輩の正面の席に座りながら、その本の背表紙を何気なく確認するも、俺の知っている本ではなかった。 「ん、昔読んでた本を見つけてさ、何となく読み返してたんだ」  そう言って笑いながら立ち上がった先輩は、さりげなく髪をかきあげて、後ろの背の低い本棚に文庫本を戻す。再び席に着きなおすと、さて、と一言置いて、声高らかに宣言した。 「今日も始めるよ、新聞部!」  先輩はカバンの中より取り出したファイルから、ノートサイズの白紙を抜き取って俺に差し出す。それは、俺が昨日の活動の終わりに、先輩に預けたもの。  新聞部は、先輩と俺の二人で活動している、非公式の部活動だ。ポジションとしては、先輩が部長で俺が部員その一と言ったところだろうか。  なぜ非公式なのかというと、この学校の校則として四人以上の部員がいないと正式な部活動として認められないからだが、そんなことは先輩にとっては些末な問題らしい。  今年の春先から新聞部は存在しているわけだが、先輩は部員を増やしたりすることなく(俺としてはもう少し人手があっても良いと思うんだけど)、二人だけの名ばかり新聞部は今日まで活動を続けてきたのだった。 「それにしても、昨日まで本当に長かったよ……」  原稿用紙に作文をしていた先輩が、不意にしみじみと呟いた。  その文脈から、先輩が何を言いたいかというのは第三者には伝わりにくい。  だけど、俺はそれを一瞬で理解することができた。 「確かに。昨日ですもんね、活動を再開したのって」
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