日差しと図書室

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 ――あれは確か四月の終わり頃だったっけ。  新聞部初の新聞発行まで後少しというところまでこぎつけた時、その出来事は突然に起こった。  今年の夏休みの終わりに少し早めの推薦入試を控えた先輩に、入試説明会が行われるとのことだった。  毎日の放課後にあるその説明会は、いつ全日程が終了するかも未定らしく、放課後に時間がとれない間は活動しようにもできないとのことで、やっと軌道に乗り始めた新聞部は、急な活動停止を余儀なくされたのだった。  新聞部が活動しないということは、事実上先輩と会う機会が無くなったといっても過言ではなかった。  実際、その日を境に、先輩と顔を合わす回数は極端なまでに減ってしまう。唯一先輩の顔を見ることが出来たのは、移動教室などで校内ですれ違った時のみで、放課後にも会うことが出来なければ、俺の三つ上の姉ちゃんのことを綾さん綾さんと慕う先輩が休みの日に家に訪ねてくることもなくなってしまった。  今だから思うんだけど、先輩と会えない日々は、それまでと比べて本当に味気なかった。  だってそうでなければ、会えなくなってから二ヶ月程経った昨日、先輩が教室にやってきて、クラスメートの前で堂々と「今日から活動再開だよ!」と嬉々とした声でのたまった時に、あのような恥ずかしくも嬉しい感情を抱くわけがなかったからだ。
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