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そして同じく昨日の放課後、先輩と俺は職員室に呼び出されて、進路指導の先生の話を聞かされた。
その内容はほとんど先輩に対する激励で、俺は何のために呼ばれたのか疑問だったんだけど、
『貴方たち、新聞部の活動のことだけど……』
どうやら、先輩と俺が新聞部を(勝手に)立ち上げていたことは、教職員の間に筒抜けのようだった。少し顔を険しくして、『活動も止めはしないけどほどほどに』だの『受験生としての自覚を持って』だの、要するに、活動を自重するよう促されたのだ。
『で、こんなこと言っておきながらなんだけど……一つ、頼まれてくれるかしら?』
俺たちのきょとんとした表情を見届けると、先生は話始めた。内容は、こんなものだった。
どうやら、説明会の前に発行寸前だった新聞は、四月の間に先輩が単独で発行していたようだ。
その新聞というのは、今年入学してきた新入生向けのもので、廊下の壁に貼られたそれに、新入生からの好評の声が多数寄せられたらしい。
それで今回も、新入生を対象にした新聞を貴方たちで作ってほしいのよ……と、手を合わせて頼まれたのだ。
その瞬間の先輩の喜びようったらなかった。
活動を再開できるようになったといっても、活動内容には、何のめどもたっていなかったから。
その矢先に、先生公認の仕事が舞い込んだわけだ。先輩が大げさなくらいに喜ぶのも、無理はなかった。
内容は任せるから、と先生が残すと同時に、先輩は早口にお礼を言うと、俺の手をつかんで職員室を飛び出して、図書室で早速部活動を再開したというわけだ。
先輩にとっては待望の、約二ヶ月ぶりの部活動を。
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