日差しと図書室

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「出来た!」  先輩が嬉しそうな声を上げたのと、俺が最後の横線を引き終えたのは、ほぼ同時だった。 「レイ、そっちは?」  俺と目が合った先輩は、俺の手元の紙を指差す。 「俺も出来ましたよ」  幾多もの線が通っている紙を先輩に差し出すと、それを受け取って品定めをするように眺める。俺は、少し緊張してその光景を見守っていた。  やがて先輩が顔を上げると、その表情は明るいものだった。 「うん、良いんじゃないかな。ちょっとだけ新聞名を入れるスペースが小さいと思うんだけど、後はなかなか上手く割り振れてるよ」  先輩の言葉を受けて、俺は安堵の息を漏らした。別に自信があったわけじゃないから、まじまじと見られると初歩的な粗が次々に出てくるんじゃないかと内心心配だったのだ。見つかったのが、パソコンの編集でどうとでもなるものでよかった。 「はい、私のも見てよ」  先輩はそう言うと、次の瞬間には俺に原稿用紙を手渡してきた。びっくりして先輩を見ると、期待に満ちた笑顔が飛び込んでくる。  俺は少し照れくさくなりながらも、複数枚あるそれの、まずは一番上に目を通した。  『校内の名物先生』と銘打たれたものが一枚目。内容はタイトルから想像できるものだった。二枚目は、『紹介! 噂の生徒会長』と何やら大々的なタイトルだったけど、これも内容とそのまま直結していて、三枚目もそれは同じだった。  だけどこれは一年を対象にしたものだから、これくらい判りやすくてちょうどいいんだろう。俺や先輩が知ってることでも、一年が知らないことなんて山ほどあるんだから。
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