日差しと図書室

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 特別気の利いた感想も述べられず、いいんじゃないですか、とただ一言で評して俺が紙を返すと、それでも先輩は嬉しそうな表情を浮かべてそれを受け取ってくれた。  ――何気なく先輩が浮かべた笑顔に、たまに見とれてしまうことがある。そんな時は、決まって視線を右下に反らして、何とか気付かれないようにするのだった。  今回も気付かれることなく、その場をやり過ごす。再び視線を戻す頃には、先輩は俺が線を引いた紙と自分の原稿用紙を照らし合わせて、なにやらウンウン唸っていた。 (ホント、頑張るよなぁ……)  一生懸命なその顔を近くで見ていると、そう思わずにはいられない。俺なんて少々手を動かしただけで今は休んでいるというのに、先輩はというと疲れなど微塵も見せずに紙と向かい合っていた。  そもそも、先輩が俺に何か部活動を始めようと言いだしたのが今から三ヶ月程前の話。先輩が、三年になる前の春休みだった。  正直なところ俺自身、いまいち乗り気じゃなかったんだけど、先輩の方は部活動をしたいがために大学の推薦をもらっただなんて言うもんだから驚きだ。  結局、俺は先輩の熱意に負けて一緒に部活動を始めることを了承してしまう。けど当の先輩は、具体的に何をするか全く決めてはいなかったらしい。  散々二人で悩んだ挙げ句、俺が何気なく新聞部はどうかと進言すると、先輩は「やりがいがありそう!」といたく気に入ったようで、そこで呆気なく決まってしまったのだ。  そこから少しの活動と、二ヶ月の休部期間を置いて今に至る、というわけだ。
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