背番号1…プロローグ

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 9回裏ツーアウト満塁、打者は前の打席でレフトオーバーの同点スリーランを打った、3番の宮澤 孝介(みやさわ こうすけ)。 『3番 ピッチャー 宮澤君 背番号6』  背番号6のエースが今、1回、2回とスイングし、右バッターボックスに入る。  オープンスタンスに構えて、俺の方を、鋭い眼差しで見る。 パッと見、リラックスしていて無駄な力が入っていない…。なので、甘いボールは全て、弾き返されるだろう。  スコアは4-3で龍神学園が1点リード。しかし、外野手の横を抜けた瞬間、サヨナラ負けである。  守備のシフトは、内野後退、外野は定位置より少し後ろ。  俺は息を吐き、捕手のサインを見る。サインは外角低めのストレート。  頷き、投球モーションに入る。振りかぶって第一球目を投げる。146kmのストレートはストライク。ワンナッシング。  二球目の101kmのカーブは、外角外れてボール。ワンエンドワンの平行カウント。  三球目は152kmのストレートが、インコース低めに決まりストライク。ツーエンドワン。 四球目を投げる。138kmのスライダー。これに宮澤が動く。インコースのボールからストライクになるスライダーが、ど真ん中に入ってしまった。 《ガキン!!》  快音を残し、打球が高々と舞い上がる。レフトへの打球は、ぐんぐん伸びていく。 実況『宮澤打った!!高く上がった!!大きい当たりだ!伸びる、伸びるぞ!?ポールの右か?左か?…左だ~…ファール…惜しい当たりでしたねぇ…』  宮澤の打球は僅かに左に切れる。 (タイミングが合ってる…スライダーは危険…ならストレートか…アレか…)  捕手のサインは…アレのサインだった。 (あんまり好きじゃないんだけど…アレを真ん中に投げるの)  そう思いながらも頷く。そして投球モーションに入る。  第五球目を投げる。俺の手元を離れたボールは、無回転でキャッチャーミットに向かう。ホームベースの手前でブレて落ちる。  宮澤のバットは空を切る。 実況『空振り三振!!宮澤三振!!試合終了!!優勝は龍神学園!!』  俺は宮澤のバットが空を切った瞬間、両腕を羽ばたく鳥のように広げ、天に向かって吼える。  みんな…ありがとう…ここまで俺を連れて来てくれて…。 この物語は、高校球児:蒼木 颯斗(あおき はやと)の高校入学から甲子園までを描いた野球コメディーである。
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