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▼2.0
「お前もう向こうと宜しくしとけよ二度と話しかけんな馬鹿」
そーやって、幸せをまた1つぐしゃり。
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言いたいことが喉元通るとあら不思議。本当に困った子。そのまま食い下がったら泣いて怒る癖に。素直じゃない。のは知ってるけど、この空気に答えられるほど博識じゃない
もう嫌だわー
目の前の横顔に答えを探す。
あら、意外と鼻高いんですね、なんつって。
指先もぞもぞさせているのは、なんだかんだであなたもこの空気から出たいんじゃないの?
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ひとっつも理解してやろうとしないくせにわかってもらわなきゃ困る。つくづく面倒。はは、サイテーだわ
どんな顔して俺の顔見てんだろ。黒目が向こうにスライドしそうになる衝動を必死で抑える。我慢。喰らう視線でこめかみが熱い。なんか言えや豚野郎お前ってほんと気利かねーな
「谷口がさー、こないだ車のことで集まった時…」
喋ったと思ったら、おいおいなんで谷口の話なんだよ。おお?え、何、気使って、励ましてるの?そういうの聞きたいんじゃないし。
そんな大人の回避どこで覚えた
あー怖っ、
一緒にいたのに気づかなかった
知らない間に随分と離れちゃってたよな
なのにこんな近すぎて、笑える。
「笑えよ、お前も」
ツーッと黒目を動かす
まだ喋ってる途中だったみたいで、口がうっすら開いている。そこから次に出てくる言葉がどんなものなのか、分からない。泣きそうなのか、怒っているのか、分からない
自分の感情でキャパ埋まっちゃって、相手の気持ち把握する容量がからっぽ。その原因は、今把握できない相手のせいで。
さっぱり、分かりません
「…泣きなさんな」
「…、泣いてねーよ」
「いや泣いてるから」
「泣いてねー」
「…ごめん、」
「何謝ってんの」
「……だって」
「勝手に謝んな」
声が震えないよう喉に集中したら、まんまと涙腺が緩んだ。さらに、鼻の奥にくる特有の刺激のせいでダムが壊れた。これはもう自分じゃどうしようもできない。それでも目頭から零れるのを隠したくて、バレバレなのに親指と人差し指で拭う
息を潜めるのにも絶えかね肺がひくつく。
「ヒッ、」という不規則で反意識的な発声をきっかけに、プライドが崩れる。
そこからは早かった
*偏屈の片思い
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