その夜の話

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「まあ、あんたらヤクザの目論見が費えようとも私には関係ないけど、私にまで面倒掛けさせないでよね」 「面倒? いったいお前に何の面倒が掛かったって言うんだ?」 「その九人が、さっき此処に運ばれて来たのよ。救急車でぞろぞろとよ。 この町には闇医者だって居るんだから、そっち行きなさいよ。ヤクザが殺し合いに負けて、堂々と民間の病院に運ばれて来るなって事よ」 「……ちげえねえ~」 強面がバツの悪そうな顔をする。それから訊いた。 「良いニュースってのは、なんだ?」 「違う、違う」 「何が違う?」 「微妙に良いニュースよ」 「いいからとっとと話せ」 「はいはい。その九人の中に、適合者が居たわ」 「本当か!」 鬼頭が驚く。今までに無い反応であった。 「ええ。公爵、東和竜栄の夢に波長が合う者」 「誰だ! 高岡か!? 坂東か!?」 「鴇尾英太と神田淳の二人よ」 昂輝に倒された変人二人。指斬り魔とガンマンである。 「ときお……に、かんだ……だと」 「ええ、そうよ」 「誰だ、それ?」 「……」 鬼頭は、どうせ仲間になるならば、極道コンピューター高岡か、怪力超人の坂東を期待した。せめてサイキックボクサーの芝克か、赤長棒の金本だろうと思った。百歩譲っても真田兄弟だろう。それが、よりにもよって、あの変人二人とは――。がっかりである。 「親分さん、贅沢はダメよ。適合者は貴重よ」 「そうだな、捨て駒でも駒は駒だな」 「うわぁ~、酷いわね。貴方の子分でしょ」 「同じ組に居るだけだ。 あいつらを組に置いといても、鉄砲玉ぐらいにしか使えない」 「鉄砲玉――ねぇ~。本当に捨て駒程度の戦力なの」 「戦力も、人格も、ゴミだ」 「あらあら、低評価ね。どちらにしても適合者を見つけたのだから公爵に報告しに行くわ。 貴方から見た彼ら二人の話もしておくわ」 「なんだ、まだ話してなかったのか?」 「公爵の病室は、この奥よ。貴方の病室が通り道だったから、先に寄っただけ」 「そうかい。俺はてっきり俺に惚れているから先に報告しに来たのかと思ったぜ」 「ゴリラみたいな顔して、私を口説いているの。歳を考えなさい」 「厳しいな、先生は」 「まあ、そう言うことだから、私は行くわ」 「あいよ、おやすみ」 「お・や・す・み」 そう言い女医は病室を出て行った。 やがて鬼頭も電動ベットの背もたれを戻して眠りに付いた。 夢の世界に入っていく。
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