二日目 東和家の人々

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早朝――五時二十七分。 以外に東和勝之の朝は早かった。寝巻き姿でベットから出ると、茶髪の頭を片手で掻いた。 まだ眠いのか、大きな欠伸で口を開きながら、壁にある時計を見た。 「ちっ、まだ五時半かよ……。もう一度、寝直すか……」 そう言いながらカーテンの閉められた窓から差し込む朝日に瞳を細めた。 「まぶし……」 東和勝之。 年齢は今年で二十五歳になるが、ろくでなしを絵に描いたような生き方を歩んでいた。 母は東和栄光の長女である東和栄江である。 三つ下の妹である理沙は、彼と違って真面目で優秀である。出気が良い。 勝之は、東和家に寄り掛かるように生きてきた。 大学は一浪の末に、何とか入学した。京大である。入学できたのは、学力よりも財力の方が大きかった。裏口入学である。 大学の方は、四年間遊んでいたが何とか卒業できた。殆ど裏金で単位を取った。ワイロを使うのは得意である。 彼は、お金を稼ぐのは苦手だが、使うのは得意であった。 卒業後は、祖父の会社に入社した。勿論、それ以外の就職活動は行なっていない。 そして直ぐにアメリカのニュージャージー支部に転勤。自分から望んでだ。 東和勝之は、賢い人間ではなかったが、英語だけは達者であった。小さい頃から英才教育された結果である。 だが、東和勝之が英語を得意とする理由は、別にあった。それは、彼の女性の好みに大いに関係している。 彼は、金髪の白人女性が好みなのである。アメリカ版プレイボーイのカバーガールのような女性が大好きなのだ。 彼が自分の好みに気付いたのは小学四年生の時である。 祖父の客人で屋敷にやって来た、ハリウッドのセレブ女優を生で見て以来であった。 誘惑的な眼差しと、情熱的な赤いルージュ。 金髪に白い肌。 ボッ、キュン、ボンなセクシーボディー。 幼心が興奮しまくり止らなかった。否。たまらなかった。 その時から外人女性と付き合う為に、それだけの為に必死で英語を勉強した。 性欲から来る情熱とは凄いパワーである。 幼少の頃から言動が荒んでおり、祖父に期待もされていなかった男が、英語だけは猛勉強したのだ。 高校生の夏休みには、アメリカにホームステイを行い、アメリカの風習も学んだ。その時に、アメリカ美人の口説き方も教わった。 金髪女性とイチャイチャする準備を、計画的に進めたのである。
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