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「よし、魂の捕獲完了。コンプリートにまたひとつ近づけたわ」
憑き姫が冷たく微笑む。
白紙だったカードには、三匹の鎌鼬が回る絵が描かれている。そしてカマイタチの名が刻まれていた。
憑き姫は、そのカードをファイルに入れると本を閉じた。やがて本自体も霧となって消えていく。
一方、軒太郎は、鎌鼬たちの骸を掻き集めていた。
「ふふふ、良い素材を得られたぜ。こいつらの鎌は使えそうだな。面白い一品が出来そうだ。否、二品ぐらい創れるぜ」
一箇所に集めた鎌鼬の死体。バラバラになった次男の鎌を手に取り黒くにやける軒太郎。その姿は怪しく奇怪だった。
「さあ、帰りましょう。軒太郎、もう私は眠いわ」
「ああ、わかった」
軒太郎に後ろから声を掛けた憑き姫の姿は、いつの間にか巫女の出で立ちから白のワンピース姿にチェンジしていた。
いかにも貴賓があるお嬢様といった清楚さが伝わってくる。
だが、かなり気が強そうな顔つき。高飛車ではないかと思える印象が強い。
しかし美人の部類だと区別できた。
あと十年も経てば、お嬢様から女王様に昇格しそうな美少女である。
「今日は荷物が多い。三匹分の収穫だからな」
軒太郎は、衣装が変わった憑き姫を見ても平然としていた。気づいていない訳でもなさそうだ。
「じゃあ私は、先に帰るわね」
「ああ、かまわん」
「じゃあ、おやすみなさい」
「おやすみ――」
こうして今宵の二人は、妖怪狩りを解散させた。憑き姫は軒太郎を残して、長い黒髪と白いワンピースを揺らしながら去って行く。
辺りの結界は既に解除されていた。嵐のような突風も止んでいる。夜空に静けさが舞い戻っていた。
その闇夜の中でひとり軒太郎が、妖怪の死体を嬉しそうに漁っていた。
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