プロローグ

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空中から迫る鎌鼬の三男に軒太郎は、銃口の角度だけを上へと向けて引き金を優しく引いた。 そして乾いた銃声が闇に轟き、火花が瞬く。 「うぎゃぁあ!」 「弟よ!」 散弾を全身に浴びた鎌鼬の三男が、空中で跳ね返るように弾かれ、兄たちの眼前に力なく落ちてきた。 二匹の表情が驚きに引きつる。 弾丸を喰らわせた軒太郎が素早くピストングリップを強く引くと、ガチャリと音を立てながら空になったシェルが飛び出て足元に転がる。 空のシェルからは火薬の煙が僅かに上がっていた。 「バカな……!」 足元に転がった三男を見て、鎌鼬の長男が言葉を濁らせた。信じられないといった表情である。 三男の顔や胸には小さな穴が複数開き、ドロドロと血液が流れ出てくる。 血みどろと化した三男は、ピクリとも動かなくなっていた。 妖怪とは不思議なものである。 拳銃はもちろんのこと、刀や色々な武器を普通の人間が使用して妖怪を攻撃しても死にはしない。 霊力や妖力、または神力がないと、たとえ傷ついたとしても直ぐに傷が治り死ぬことがないのだ。例えミンチからでも蘇る。 だが、黒ずくめの男が撃った散弾銃の一撃は、妖怪鎌鼬を即死に追い込んだ。 しかも拳銃は、妖力や霊力が宿り難い。普通は、妖怪が銃で撃たれて死ぬことはない。 鎌鼬たちは、それを知っているからこそ驚いているのだ。 「このショットガンの弾丸は、鉛玉を使用せずに、妖怪の髪の毛を針状に纏め鍛え上げたものをシェル内へ仕込んであってな。それで妖怪相手でも絶命を誘えるんだぜ。髪の毛針ショットガンって感じだ」 弾丸までもがカスタムマイズされたショットガン。 その能力を自慢げに語る軒太郎の表情は、優越感に浸りきっていた。 「よ、よくも弟を!」 二匹残った鎌鼬の兄弟が、更に凶暴な表情へと変わる。 弟が殺められたのだ、当然と言えよう。 身内を殺された怒りが目に見てわかった。四つの鎌が憤怒に光る。 「行くぞ、弟の仇討ちだ!」 「おうよ、アニキ!」 鎌鼬二匹が一斉に前へと走った。スピーディーにフェイントを狙ったジグザクの動き。混相手の乱を狙っている。 軒太郎が瞳だけを左右に振って二匹を追う。 「ちょこざいな」 余裕の表情でショットガンを撃ちまくる軒太郎。裏路地に火薬の発砲音が鳴り響く。 だが、ジグザクに走る鎌鼬たちには、散弾して飛んで行く毛針の玉は、一発も当たらない。
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