56人が本棚に入れています
本棚に追加
あれは三日前のことだった
僕は探偵社という怪しい
(しかも事務所が入ってるビルがまた古いのなんの…)
職場にも、巽というこれまた怪しい?私立探偵にも馴染めないまま、
やがて一ヶ月となる試用期間…(巽さん曰く)を終えようとしていた
「君って、まじめだよねぇ」
整理整頓て言葉をしっているのかと疑いたくなるほど乱雑なデスクの向こうから巽の声がする
「遅刻もなし、欠勤もなし、愚痴も…まぁ今んとこなし」
後ろにひっくり返らないのが不思議になるほど
椅子の背もたれを限界まで倒し
伸びをしながら巽は続ける
「しっかしまぁ、アレだ、いくら不景気の就職難とは言っても、よくこんな胡散臭いとこに入る気になったよなぁ…?」
(…オイオイ、自分でうさんくさいって…ってか普通、無遅刻無欠勤だろっ、試用期間中なんだからっ!)
とか思いつつ
僕は苦笑いを浮かべて
「巽さん、またそれ言っ…」
「まっ、おっさんの紹介もあるし、君はナカナカ見所が…あるのかな?タブン」
…ガク…
タブンて何さタブンて…
おっさん、と言うのはこの町の警察署に勤める
亜門と言う、初老の刑事さんのことだ
僕はあるきっかけで亜門さんと知り合い
「人生経験の一つだからやってみ。アッチには俺から紹介しとくからよ」
なんて、あれよあれよと言う間にこの探偵社の門を叩いたのであった…
キィっと古びた椅子を鳴らして唐突に巽が立ち上がると、事務所入り口のドアを指差して言った
「ヒロ君、お客さんみたいだ」
「えっ?」
最初のコメントを投稿しよう!