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そういえば
僕がここに来てから
依頼人?つまりお客さんが来ているのを見たことがない
いや、たまに電話がかかってきて
巽さんは話を少しした後に大抵こう言うんだ
「あ~すみません、ウチはマトモなのはちょっと扱ってなくて…」
そう言って、どうやら仕事を断っている
最初、「マトモ」じゃないものって…?
なんて思ったが
巽さんの性格がだんだんわかってくると
「ぐうたら、いい加減、アバウト、って感じかな?」
「てか、この事務所よく潰れないよな…ブツブツ」
スコーン!!!
「あだっ!!?」
不意に
頭めがけて何かが飛んできた
「ヒロ君、独り言は胸にしまっておくのがクールってもんだよ?」
ニヤッと
(本人はおそらく爽やかなスマイルのつもり)
笑みを浮かべ、床に転がるボールペンを拾いながら巽が言う
「す、すいません~」
…まさか後ろにいるとは…
「まぁでも、当たってるよ君、いい探偵になれるんじゃないか?」
…アンタはダメな探偵か?
なんて言いたかったが
ふと僕は傍らにいる少女が泣いているのに気付く
(…オイオイ、何したんだよアンタはっ…)
「あの、巽さん、それでは宜しくお願いします…」
「ん、あぁ、確かに引き受けました。一週間以内には結果を出すので」
「はい、気をつけてくださいね…。では、失礼します」
僕が声をかけそびれているうちに
フラフラとおぼつかない足取りで少女は去っていった
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