巽探偵社へようこそ

5/11
前へ
/170ページ
次へ
そういえば 僕がここに来てから 依頼人?つまりお客さんが来ているのを見たことがない いや、たまに電話がかかってきて 巽さんは話を少しした後に大抵こう言うんだ 「あ~すみません、ウチはマトモなのはちょっと扱ってなくて…」 そう言って、どうやら仕事を断っている 最初、「マトモ」じゃないものって…? なんて思ったが 巽さんの性格がだんだんわかってくると 「ぐうたら、いい加減、アバウト、って感じかな?」 「てか、この事務所よく潰れないよな…ブツブツ」 スコーン!!! 「あだっ!!?」 不意に 頭めがけて何かが飛んできた 「ヒロ君、独り言は胸にしまっておくのがクールってもんだよ?」 ニヤッと (本人はおそらく爽やかなスマイルのつもり) 笑みを浮かべ、床に転がるボールペンを拾いながら巽が言う 「す、すいません~」 …まさか後ろにいるとは… 「まぁでも、当たってるよ君、いい探偵になれるんじゃないか?」 …アンタはダメな探偵か? なんて言いたかったが ふと僕は傍らにいる少女が泣いているのに気付く (…オイオイ、何したんだよアンタはっ…) 「あの、巽さん、それでは宜しくお願いします…」 「ん、あぁ、確かに引き受けました。一週間以内には結果を出すので」 「はい、気をつけてくださいね…。では、失礼します」 僕が声をかけそびれているうちに フラフラとおぼつかない足取りで少女は去っていった
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加