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『殿。今さっき、「誰かある……」と、お呼びになられたではありませぬか?
主君の所望に応えるのが、それがしが勤め。』
リンスを洗い流すと、サッとタオルが差し出され。
もう一枚のタオルが、ふんわりと白雪の肩に掛かる髪を包み込んだ。
『刀を売っ払らわれては困ります故、一応目隠しなどいたしました。
これで、殿の湯浴みを覗いた事にはなりますまい……。』
透明な体に、透明な目隠し……!?
「透明な目隠しって……意味あるのか~?
ダイイチ僕は、お前なんか所望してないぞ!」
『こんな広い湯船にひとりで浸かるは、寂しい寂しいと……誰か来ないかなぁ……と、思われたではないですか?
さ!殿♪それがしが抱っこして差し上げます故、一緒に湯船に浸かりましょ♪』
ピキピキピキと、何かに罅が入る音が聞こえた気がして……月丸は、はて?と首を傾げた。
『殿?お顔の色が、優れぬようですが……?』
「顔色が悪いと、良くわかったなあ~?
……。」
月丸は、しまったあぁ!と言う顔をして湯船の中に飛び込み……白雪は、壁に付いているリモコンの水抜きのスイッチを押す。
月丸は水流と一緒にグルグル回り、やがて排水口へと吸い込まれていった。
「ひとの感情を勝手に覗くな!」
パンパンと両手を叩いて、白雪は前も隠さずに浴室をあとにした。
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