1.眠り姫と小姓

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『殿。今さっき、「誰かある……」と、お呼びになられたではありませぬか? 主君の所望に応えるのが、それがしが勤め。』 リンスを洗い流すと、サッとタオルが差し出され。 もう一枚のタオルが、ふんわりと白雪の肩に掛かる髪を包み込んだ。 『刀を売っ払らわれては困ります故、一応目隠しなどいたしました。 これで、殿の湯浴みを覗いた事にはなりますまい……。』 透明な体に、透明な目隠し……!? 「透明な目隠しって……意味あるのか~? ダイイチ僕は、お前なんか所望してないぞ!」 『こんな広い湯船にひとりで浸かるは、寂しい寂しいと……誰か来ないかなぁ……と、思われたではないですか? さ!殿♪それがしが抱っこして差し上げます故、一緒に湯船に浸かりましょ♪』 ピキピキピキと、何かに罅が入る音が聞こえた気がして……月丸は、はて?と首を傾げた。 『殿?お顔の色が、優れぬようですが……?』 「顔色が悪いと、良くわかったなあ~? ……。」 月丸は、しまったあぁ!と言う顔をして湯船の中に飛び込み……白雪は、壁に付いているリモコンの水抜きのスイッチを押す。 月丸は水流と一緒にグルグル回り、やがて排水口へと吸い込まれていった。 「ひとの感情を勝手に覗くな!」 パンパンと両手を叩いて、白雪は前も隠さずに浴室をあとにした。
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